そのときだった。

「真木君」

 名前を呼ばれて振り返る。

 そこには上司の美香さんがいた。

「なんすか?」

 俺はマイクを押さえて聞いた。

「今から仕事入ってもらっていい?」

 今から美紀に会おうとしてたんだけどな。

 そう言いたかったけど、

「お願い!」

 手を合わされると、嫌とは言えなかった。美紀には負けるけど、美香さんも美人だ。

「わかりました」

 俺は答えて携帯を耳に当てた。

「ごめん、美紀。今から仕事入っちゃってさ、今度でいいかな」