逞に聞かれた。
「え…?うぅん、ヘーキヘーキ」
私は、顔の前で手を振った。
ごはんも終え、風呂も入って、後は寝るだけ。
さすがに、明日から会えないわけだし、喧嘩したままっていうのは嫌だった。
逃げといてかっこ悪いけど、自分から電話をかけよう。
携帯を開いて、発信ボタンを押そうとした、まさにその時だった。
ピンポーン、と間延びしたチャイムが鳴ったのは。
「逞、出て!」
食器を洗っている母さんが言う。
「無理ぃ」
「じゃあ、美紀、出て!」
私は仕方なく玄関に向かった。
ガチャッとドアを開けて、顔を上げる。
「よぅ」



