「はぁ…」
私は何回目かのため息をついて、立ち上がった。
ズボンのベルトをして、ドアを開ける。
「美紀!」
廊下で花梨さんの向かい側に立っていたマッキーが、私の名前を呼んだ。
私に駆け寄ってくるマッキーを制して、私はあくまでも、笑顔で言った。
「私、ちょっと早いけど帰るね。マッキーは花梨さんといてあげて」
俯いてる花梨さんの儚げな横顔を見て、マッキーは見ずに私は部屋へ戻った。
「おいっ、美紀!」
マッキーが、また私の名前を呼んだ。いつもなら、嬉しいと感じるのに、今は名前で呼ばれると泣きそうになる。
部屋に戻った私の後を追ってきたマッキーが、荷物を詰める私の腕を強く掴んだまま、離さない。
「私は、大丈夫だから…」
マッキーがそのあとも何度も言葉をかけてきたけど、私はそのたびに「大丈夫だから」を繰り返した。