「楓、あのね…。」
ギュッと雅が私を包むように抱きしめてくれた。
「雅?」
「さっき、楓が言ったように私は祥弥さんから一通り聞いてきたよ。」
「うん。」
「祥弥さん、ちゃんと話したいって言ってた。」
行ける?と雅は私の耳元で言った。
「ちょ、っと待って。行ける、って今?」
「今。」
「いや、え?今?」
びっくりして固まっている私に雅は笑いながら1枚の紙を私に渡した。
「祥弥さんの番号だって。楓は知らないだろうからって。」
「雅…。」
「ほら、洋服選び手伝ってあげるから行ってきなよ。ショッピングモールだから。」
いやいやいやいや。
待ちましょうよ雅さん。
ちょ、クローゼットを勝手に開けるな!
ポカンとしてる私をよそに雅はどんどんクローゼットから洋服を出しては首を傾げたりしてる。
…これはもう駄目だな。
私も、腹を括るしかないかな。
手の中に収まっている綺麗に折られてる紙を開く。
そこには携帯番号と“登録だけしといて、着いたらメールして”と書いてあった。
私は祥弥の所に追加登録して服を選ぶ雅の隣に立った。
「行ってくるよ。」

