One Single Color

「俺の事、嫌い?」


そして耳元でそう囁いた。


「違う」


名前は発せないけど、否定の言葉なら出た。


「じゃあ、…好き?」


あまりにも直線的な質問に体が緊張する。


「わから、ない…」


これは、心からの叫びだった。


「わからない…わからないの…っ」


私が、彼になにをしたんだろう?


「怖いっ…怖い…」


いつ、あんなに怒らすようなことをしたのだろうか?


「いや、いやぁ…」


どうして、私にだけ冷たいの?

私が頭を抱えてずるずると下がっていくのをみると、瑞希君が少し距離を置いた。


「俺が怖いの?」

「…怖い…」

「俺の事、嫌い?」

「違う」

「じゃあ、好き?」

「わからない」


ゆっくりと、瑞希君は座り込んでいる私をやさしく抱きしめた。


「俺は、好き」