One Single Color

「「「さようならー!」」」


一日が、終わってしまった。結局、そんな緊張して過ごさなくてもいい一日だったのかもしれない。

そうやって何も生み出さない疑問を頭の中で問い詰めている間、他の同級生はどんどん教室から出ていく。

私も家に帰ろう、と思った矢先に、


「おい、高坂。ちょっと用がある」


担任の宇治原先生に呼びとめられた。


「なんですか」


早くしてほしくて、ちょっと怒ったように返事をした。


「おう。昨日の事なんだけどな。ほら、大森も来い」


一瞬で血の気がサッっと引く。瑞希君は当然のように私の隣で足をとめた。


「お前ら、昨日美術の時保健室かなんかに行ったろ? 高坂は早退するし、大森もお前ー、次の授業まで返ってこなかったじゃねぇか」


何事もないように先生の話を聞く。それでも瑞希君の方なんて、とても見れない。


「忘れ物してるんだよ、二人とも。ほれ」


そういって先生は私と瑞希君の手にノートやらなんやらを渡した。


「高坂はわかる。でも大森の野郎、気付かないのか~? このド天然の頭じゃ」

「ちょっ、やめてくださいよ先生ー」


宇治原先生の頭ぐしゃぐしゃ攻撃に瑞希君は優しく付き合ってあげてる。


「ほら、教師なら仕事して来てくださいよ」

「これも仕事だばか」


瑞希君が背中をぽんぽんと叩くと、宇治原先生は悪態をつきながらも廊下へ出ていく。

今、この教室にいるのは私と、瑞希君だけだ。