One Single Color

休み時間はすべてトイレに籠るなりして瑞希君から遠ざかった。

あっという間に、お昼休みである。

給食を食べ終わった私と藍音は、騒がしい廊下で話をしていた。


「瑠璃子さ、昨日どうしたの? 早退したじゃん」

「あ、ちょっとお腹が気持ち悪くなっちゃって」

「…もしかしてさ、大森に何かされたり?」


顔が、引きつる。まったく親しさというのは時にはこんなにも面倒くさいものなのかと考えてしまう程に。


「そんなことないよ! 瑞希君はそんな人じゃ、ない…」

「ふーん」


藍音はもう話には興味なさげに自分の爪を見ている。


「ちょっ、やめろよー!」


突然聞こえた一際大きな声に私たちは目線を移した。

見れば瑞希君が彼の友達と一緒にふざけあっていた。

そう、瑞希君はあんな人なんだ。ああやって、自分の男友達とは明るくやっていける。

ふと、今朝二時限目の休み時間に見た光景を思い出す。

女子の子に宿題を見せてくれと頼まれた時の瑞希君。

さっきまで友達と遊んでたのに突然口下手になっちゃって、敬語まで使い始めて。

ずっと下を向いたまま目を合わせようとしなかった瑞希君を、思い出す。

そして、昨日の、私を睨む冷たい炎のような彼の眼差しも思い出す。

あの二人は、本当に同じ人なのだろうか?

まるで人格が入れ替わったかのように、私にだけあんな冷たい眼差しを送るのだ。

私は、彼が、怖い。