公園のベンチに並んで座ると、叶多はボーッと夕日に染まる空を見つめた。
「レジ、無理はするなよな。」
「は……?」
急にそう言った叶多を見た。
「いや…何か、今のレジがあの時の兄ちゃんに似てたからさ。」
「叶多のお兄さん?」
「そう。インターハイに行った時の兄ちゃんに似てるからさ。」
そう言えば、予選前に全員の意気込みを聞いた時のことを思い出した。
『小さい時に、兄ちゃんがインターハイにいった時の試合を見て、俺もインターハイにいきたいってずっと思ってたんです。』
叶多のお兄さんは、インターハイにいったと言っていた。
「俺の兄ちゃん、すごく頼りになるんだけどさ…普段レジみたいにあまり口数が多くないんだよ。」
「………」
「黙るなよー、悪い意味じゃないから‼︎」
そう言って苦笑いして、叶多は話を続けた。
「兄ちゃんもさ、レジみたいに1年の時から試合に出てて“次期エース”とか言われてたんだ。部員からの期待とか、嫉妬とか、憧れとか、色々な思いとかが全部兄ちゃんに向けられてさ……」
叶多は俯きがちに言った。
「頑張りすぎて、スランプになって挙げ句の果てに、二度とバスケが出来ない体になった。」
「……叶多…」
「我慢強くて、頑張り屋だから周りの期待に応えようと必死になって練習して空回って。家族にも相談しないし、顔にも出さなくて…いろんな思いを、重いプレッシャーを背負って。終いには肩と膝を怪我してさ。」
少し寂しそうに笑うと、俺の肩に手を置いた。


