天神楽の鳴き声

「私達は捜してるんですよ、主の命令で」
「主って…だ…」

「お前らさー、早く見つけれねぇのかよ!!」

空から降ってきた男。いきなりの怒声が夜の村に響く。その男も見たことがある、市場で声をかけてきた背の低い男だ。確か、苳熹だ。


「すみません、主。ただ、私には主の言う香りなどわかりませんので…」
「こんな近くで、匂うの…に、ってあれ?お前、この前の市場の」

「この前はお世話になりまし…って近い近い近い!」

いつの間にか苳熹は雛生に顔を近づける。恥ずかしさに、身体を硬直させ、雛生は真っ赤になる。
苳熹は顔を綻ばせた。

「みつけた」
「何が、…ですか!?ていうか、急に失礼じゃ…」

そして、苳熹はさらに無作法にも、雛生の着物の襟に手をかけた。雛生の胸元を指差す。

「お前が俺の捜していた女だ」
「は…なにが…」

雛生は自分の胸元を見る。そこには見たこともない刺青のようなものがあった。前に、苳熹に見せてもらったものだった。

なんで私に…?

「連れてきますか?主」
「愚問だ。いくぞ」

ひょいと苳熹に担がれる。

「もうやめ…、私、行きたくない!!」

ばたばたと力の限り雛生は暴れるが、それを全く物ともしない。