「だからって、だめだろ!!雪佳」
「お前こそ、様づけ、雪佳様、だろう、透璃」
低い穏やかな声が降ってきたかと思うと、透璃の頭に拳骨が落ちた。
「いってぇぇえ…」
透璃は涙ぐみながら、その場で悶える。
拳骨を落とした張本人は涼しげな顔をしている。同じことで注意させるな、と呆れた顔で言う。
確か銀様のお世話をしている透茉(トウマ)という人だった気がする。
透茉は、銀様と同じ、銀の髪を肩ぐらいまで伸ばした男性だ。歳は二十そこそこに見えるが、かなり歳をくっていると自分で言っていた。
「銀様、長くお話するのは御体に障ります。そろそろ」
「……そうね、長話させてしまいました。ごめんなさい」
「いえ、では、失礼します」
「ええ」
透茉は銀様を横抱きし、ぺこり、と頭を下げた。
銀様という立場を手に入れたとき、健康な足をなくす。足はあるが、歩けなくなってしまうのだ。
この場所から、逃げないようにするために。
彼女もまた囚われている人間のひとりなのだ。
ー…
「お前こそ、様づけ、雪佳様、だろう、透璃」
低い穏やかな声が降ってきたかと思うと、透璃の頭に拳骨が落ちた。
「いってぇぇえ…」
透璃は涙ぐみながら、その場で悶える。
拳骨を落とした張本人は涼しげな顔をしている。同じことで注意させるな、と呆れた顔で言う。
確か銀様のお世話をしている透茉(トウマ)という人だった気がする。
透茉は、銀様と同じ、銀の髪を肩ぐらいまで伸ばした男性だ。歳は二十そこそこに見えるが、かなり歳をくっていると自分で言っていた。
「銀様、長くお話するのは御体に障ります。そろそろ」
「……そうね、長話させてしまいました。ごめんなさい」
「いえ、では、失礼します」
「ええ」
透茉は銀様を横抱きし、ぺこり、と頭を下げた。
銀様という立場を手に入れたとき、健康な足をなくす。足はあるが、歩けなくなってしまうのだ。
この場所から、逃げないようにするために。
彼女もまた囚われている人間のひとりなのだ。
ー…


