「ただのお伽噺かもしれません。けれど、嘘だと決め付けるには早いでしょう?…真に近づくは禁忌、君子であれば近づかないでしょうね」
でもわたくしはね、と銀様が続ける。
「素直に生きてほしい。…あなたは、わたくしの外との繋がり。…この場所を動けないわたくしの」
銀様、という役目は白官の長であり、この国の行く末を視る巫女のことだ。
あまりに役目が重いため、この白徭宮の奥から出ることはできない。
「銀様…」
雛生が声をかけようとすると、目の前を黒い物体が駆け抜けた。
「うわっ」
「待ってちょーだい!!雪花菜(キラズ)」
いきなり飛び出してきた黒い物体は猫だったようだ。白い空間に現れた黒猫はとても目立つ。それを追いかけ出てきた六つぐらいの少女。
「そっちいっちゃだめって言ったでしょう?」
切り揃えられた黒い髪がさらさら揺れる。その少女は黒猫を抱えあげ、銀様を見ると丸い目を輝かせた。
「おかあさまっ!!」
ぎゅううう、と抱きつく。その間で、黒猫が苦しそうに、なあぁご、と鳴く。
って、ちょっと待ってよ。
雛生は一人混乱に陥る。
おかあさま?
銀様、が、産んだ?
雛生の混乱を知ってか知らずか、銀様がくすくす笑い始める。話してみれば、老成した雰囲気があるものの雛生と同い年または歳下に見える銀様がおかあさま等(など)と呼ばれている姿はかなりの違和感がある。
でもわたくしはね、と銀様が続ける。
「素直に生きてほしい。…あなたは、わたくしの外との繋がり。…この場所を動けないわたくしの」
銀様、という役目は白官の長であり、この国の行く末を視る巫女のことだ。
あまりに役目が重いため、この白徭宮の奥から出ることはできない。
「銀様…」
雛生が声をかけようとすると、目の前を黒い物体が駆け抜けた。
「うわっ」
「待ってちょーだい!!雪花菜(キラズ)」
いきなり飛び出してきた黒い物体は猫だったようだ。白い空間に現れた黒猫はとても目立つ。それを追いかけ出てきた六つぐらいの少女。
「そっちいっちゃだめって言ったでしょう?」
切り揃えられた黒い髪がさらさら揺れる。その少女は黒猫を抱えあげ、銀様を見ると丸い目を輝かせた。
「おかあさまっ!!」
ぎゅううう、と抱きつく。その間で、黒猫が苦しそうに、なあぁご、と鳴く。
って、ちょっと待ってよ。
雛生は一人混乱に陥る。
おかあさま?
銀様、が、産んだ?
雛生の混乱を知ってか知らずか、銀様がくすくす笑い始める。話してみれば、老成した雰囲気があるものの雛生と同い年または歳下に見える銀様がおかあさま等(など)と呼ばれている姿はかなりの違和感がある。


