天神楽の鳴き声

志臣はあんなふざけた事をしているが、無理矢理に手を出そうとしない。
本来であれば、この国の未来のために契らなくてはならないのに。
雛生という小さな存在とを天秤にかけてくれているのだ。雛生の気持ちを一番に考えてくれる。


雛生がそう言うと、銀様はあらら、とおかしそうに笑っていう。

「歳の差など簡単に飛び越えてしまうものなのですよ?……まぁ、立場が出来てしまえば、見えるものが見えなくなってしまうことがありますものね」


銀様は遠くを見て悲しそうに笑う。ねぇ、と雛生の手を銀様は握って、まるで願い事をするかのように言う。

「あなたは、心一つで行動してね。…わたくしはもう疲れてしまった。心は老いてゆく、けれど体は老いることはない、そんな矛盾に壊れてしまいそうになるの」


「銀、様?」
雛生がそう言うと、私事でごめんなさいね、と手を離す。細く白い手はまるで温度がなく、不健康に感じてしまう。


「あなたに役立つであろう、わたくしの全てを残りの時を費やしてあなたに与えてゆきたいと思ってるんです…ああ、そういえば、まだ天神楽を破壊したいだなんて思ってるんですか?」

莉津や明乎たちのように咎めるわけでなく、くすりと面白がるみたいに笑う。

「『天神楽が嫌いだから、破壊してもいいですか?』…そんな事言う子初めて見ましたから」
「今でも、そう思ってるなんていったら銀様は反対しますか?」

雛生が銀様の声と被せるようにいうと、びっくりしたように銀様は目を見開く。また、穏やかに微笑む。