天神楽の鳴き声

御簾の奥に座っている銀様は雛生と同じ年頃に見えるが、実際はかなり歳上だ。


「来てくれてありがとう。老いぼれとのお話はつまらないでしょうけれど」
「老いぼれって…そんな風には見えませんけど」


申し訳なさそうに長い睫毛が伏せられる。銀の髪がさらさら零れ落ちる。
憐れみを誘うような美しさ。
下品なものではない、透明感のある香りたつような色気。


「ほほほ。…もう、歳を数えるなんて忘れてしまったぐらいなんですよ?」

穏やかに袂で口を隠しながら笑う銀様。

「銀様、御用は…」
「…お話をしたかったんですよ」

ころころと軽やかに笑う姿はまるでは少女のようだ。

「お話?」
「そうそう、雛生さん、帝に輿入れして一年でしょう?…上手くいっていますか?」

「あー…」

好奇心旺盛に目を輝かせ、雛生に根掘り葉掘り聞こうとする。返答に困っていると、

「あら、では仲よくいってないのですか?」
「いえ、仲よくいってないとかでなく…」

銀様の、湖の底のような奥の見えない瞳に覗き込まれ気まずく思う。


「志臣、…様は、私に本気で手を出そうとしませんし。…きっと九つも下の私など子供と同じなのだと思います」