天神楽の鳴き声

ー...

「いやー、相変わらずの愛しっぷりお見事ですねー」

空平に冷やかされながら、志臣は五月蠅いと言って、甘露茶を淹れる。自分の分だけ注ぐと、横からにょんと手を出して、志臣の湯呑を奪っていく。
おい。

「相変わらず美味いですねぇ、主上の淹れる茶は」

「なんで、お前は人のお茶をとってくんだよ」

「主上、俺のために注いでくれたんじゃなかったの…?」

手を口にあて、大げさに目を見開く。そのイラッとする動作は今年、志臣と同じ年齢になる普通の男には余りに可愛らしく不似合いに見えるが、何故だか空平にはとても似合う。


誰がお前なんかに注ぐか、と志臣は空平の湯呑みを取り上げる。

「主上、一人分しか注ごうとしなかったでしょ?…俺はそんなあなたにね、他人(ひと)に思い遣りが必要だって事をね、身を挺して教えてやったわけなのよ」

わかるー?と上目遣いで言ってくる志臣にイラッとして、毎日執務室に山のように届く資料の一部を顔にぶつけてやる。


「うわっぷ」

なんとも間抜けな声を出しながら、ぶつけられた資料を、なんですかー?と言って掴む。

「調べといてくれ」
「これ…は、」

見ていた目が険しさを増す。
「この国が揺らぎ始めている兆しかもしれない」