天神楽の鳴き声

「お楽しみのとこすみません、…そろそろ雛生様、湯浴みの時間ですよー」


申し訳なさそうに、莉津が室に入ってくる。
「べ、つにお楽しみなわけじゃないし…」

腰の辺りで抱きついたままの志臣を慌てて引き剥がそうとする。そのせいで、寝台がぎしりと音をたてた。

「雛ちゃんお楽しみにしか見えないよー?」
明乎がからかったように笑う。その言葉にまた顔を赤くして否定する。

「違うーっ!!」
「もう少しー」

志臣がぎゅうううっと抱き締める力を強める。
「もう充分甘やかしたでしょうが!!」

頭をぺしっ、と叩くと渋々志臣が離れてくれる。

置いてかれた犬のようななんとも情けない顔をした。十近くも歳上のようには見えない。


「うわー、主上、下のものが見たら泣きますよ」
「今以外は見せてないからいいの」

ふん、と断言した志臣を尻目に雛生は室を出た。
莉津も明乎もそのあとを追って出ていく。

「芯罌殿(シンオウデン)の方で湯浴み、と思っていたのですが、」


雛生は莉津を見ると、ひらりと飛んできた白い蝶を指先で触れた。ちりん、と鈴の音のような音を響かせ空気に溶けた。

この白い蝶は、白官が飛ばしたものだ。
連絡などを取り合うもので、雛生や莉津など紅官は赤い蝶、蒼官は青い蝶を飛ばして連絡を取り合う。

難易度の低い術のため少しの訓練さえつめば誰でも使えるようになる。

「銀(シロガネ)様がお話したいそうですから、先に白徭宮(ハクヨウキュウ)に先に行きましょう」
「銀様が?一体何の御用なんだろう?」

雛生は首を捻りながら邸をでる。