天神楽の鳴き声

言い訳のように呟く、莉津の頭を撫でてやる。
そうすると、恥ずかしそうな、嬉しそうな、悔しそうな、よく分からない顔をして、ずるいです、と呟いた。


「ごめんな」
「姉さんの事なら、別に間違ってないですよ…ただ、空平さんには言って欲しくないだけです」

濃緑のふわりと揺らめく長い髪、莉津と同じ新緑の瞳を細め、笑う、彼女。

―二人とも、だいすきよ。

そう言って抱き締める、莉津の自慢の優しい姉、空平にとっては、少し年齢が近すぎたような気がしたけれど。

彼女の事を考えると、空っぽの心が満たされるような気がする。
愛しく、優しい時間はあまりに早く零れ落ちた。


(また、そんな顔するんですねぇ…)

明らかに違う人の顔。
莉津は、その顔を見るたび心がぎしりと痛む。握り潰されるみたいに、息苦しいような気がする。


「…帰りましょう」

そう呟いて、すくっ、と莉津は立ち上がる。
息苦しさを紛らわしたくて、この場を離れたくて、空平に背を向け歩き出す。

「…だから、なげやりな事を言って欲しくないんですよ」

「何か言ったか?」

呟きは空平には届かなかったようだ、笑顔を貼り付けて笑う。

「なにも」

何かの勝負をしているかのように一定の距離を保って、壊せないでいる。

けれど、莉津はこの勝負が成り立つわけがないことを知っている。

知っていても、心はこんなに軋む。慣れることのない痛みはいつまで続くんだろう。