天神楽の鳴き声

自嘲気味に雛生は、ふっ、と笑う。

不可解な感情はゆるやかに心の深い場所に沈殿し、じわりじわりと広がる。

「笑って」

志臣は雛生に手を伸ばし、頬を撫でた。

「……」

優しくしないで、心が千切れそうに叫ぶ。ちりちり傷んで、甘えてしまう。

叫べない対極の気持ちは掠れ消えてしまう。

どちらが自分の本心だなんてわからない。


―…

空平は彗由宮を出て、裏にある霊力が溜まりやすいという小さな森に入る。

綺麗な空気が一体を包むと共にぴりりと身体が痛む。
武官である人間は不浄な血を浴びるため、どんなに清めようと清らなこの場所は空平を拒むのだ。

「おーい、莉津」

呼び掛けても返事はないが、気配はある。
大方、どこかの木の影に隠れているのだろう。

空平は視界を巡らすと、まるいかたまりはいとも簡単には見つかった。

木の影にいる、まるいかたまりこと莉津に気付かれないように、忍び足で近づく。

「不貞腐れないの。莉津」

その声にびくっ、と莉津は肩を揺らした。空平を見上げる。

「不貞腐れてませんよーだ」
「子供の時から変わんないねぇ。そーゆう癖」

空平がそういうと、逃げるように莉津は目を伏せる。足を抱え、体をさらに小さくきゅっと縮める仕草は昔と重なる。


「糞意地の悪いことばっかいうからですよ」

そっぽを向いて、まわりの草をいじいじする。