天神楽の鳴き声

雛生は彼が理解出来ない。好きになれる要素なんてどこにあったのだろうか、何がどうしたのだろう、そんな途方もない疑問がぐるぐるまわる。胸がざわついて、そわそわする。

恋人期間なんてものがなかったふたりに近すぎる距離は違和感を与えるだけだった。

どうあれば良いのか、わからずに、ただ、この生温い関係を続ける。

許可など取らずともいくらでもそういう事を致すことが出来るのに、しないのは、ただこの男が馬鹿なだけなのか。

婚姻の儀のとき、真っ直ぐ雛生を見て笑って言った。

幸せになろう、と。

その優しい響きを持つ言葉に雛生は泣きたくなってしまったのを覚えている。

「ばっかみたい」
「好きだよ、雛。…恐いことなんて言わないで。破壊だなんてしたら、天神楽は鳴いて…みんな不幸せになってしまうよ」

「なんで、好きになんてなれるの?」


彼は身の回りの全てを愛そうとする、
優しい、優しい人だ。
優しさがささくれる心に染みて泣けてしまいそうになる。
その疑問がわからないのか、志臣はきょとんとして笑った。

「もういい…」
あほくさくなって、雛生は首をふった。


雛生に綺麗だと言って、触れ、優しいねと言って撫で、好きだと言って微笑む彼は、

私の何を見ているのか。
私はそんな素敵な人間ではないのに。