北風の猛威も過ぎ去り、やわらかな陽射しと新芽の香りを運ぶ風が街行く人々を包んでいる。
女の子達が冬の分厚いコートを脱ぎ、パステルカラーの綿コートに袖を通し始める頃。

先崎春加は白いドレスに身を包み、鏡に映る自分の姿を見ながら呟く。

「やっと…か。」

永かったな、と付け加えるその顔は優しい微笑みをたたえている。

「もぅ8年かぁ…貴之と出会ってから」

春加は8年前、まだ高校2年生だった頃、野井貴之との出会いを思い出していた。