暫くして、車はあるアパートの前で停まった。
そのアパートは繁華街には不釣り合いのボロボロな姿だった。
「礼様、ここでございます」
「ありがとうございます。
あの、あたしだけで行かせてもらえませんか?」
「そ、それは無理でございます。
いくら礼様のお頼みでも、私は礼様を自ら危険な地に放り投げるようなことはできません」
「お願いします!!!」
あたしは頭を深く下げて懇願した。
「……では、アパートの入口で待っております」
「ありがとうございます!!!」
「でも、30分しても帰ってこないようでしたら私が迎えに参ります。部屋の番号をメールでお知らせ下さい」
「はい、わかりました」
「では、お気をつけて…」
あたしは階段をのぼる。
“恭哉”か“神田”とプレートに書いてあるはず。
あ、あった!
吉村さんに
『102です』
とメールで告げ、チャイムを鳴らした。

