駆け足で階段を昇る。



その時だった。


−−ドンッ−……


智世は誰かにぶつかった。



「すみません。大丈夫ですか?」


「君の方が大丈夫じゃないみたいだよ…」


「へっ…!?」


智世が周りを見ると…。


カバンから教科書が散乱していた。



すると、ぶつかった男の子が拾い始めた。



「はい。『さかがみ』さん!」


と智世に教科書を手渡してくれたのは坂井くんだった。



「あっ、ありがとう…ございます。」


智世は緊張しながら、教科書を受け取った。



「あっ、あの…智世は、『さかがみ』じゃないんです」


「えっ?」


「だから…智世の苗字です。『さかがみ』じゃなくて『さかうえ』です。」


すると…坂井くんはニコッと笑いながら


「ごめんね…『さかうえ』さん」


と言った。