そしてついに、修学旅行当日。
主に電車での移動となり、集合は駅。
大きなバッグと、移動用の小さなバッグを持って歩いていると、
「伊田、荷物多すぎ」
小さめのドラムバッグを肩にかついだ千葉が、あたしの横に並んだ。
「千葉こそ、荷物少なすぎ。忘れ物してんじゃないの?」
「必要な物だけ持ってくれば、こんなもんだって」
そう言いながら、自然な仕草であたしの手から大きい方のバッグを取る。
「そこの階段だけな」
集合場所の手前には、階段がある。
でも、階段があるのはまだ先だし、そんなに長くもないから、わざわざ持ってもらうまでもないのだけど。
最近になって気付いたことだけど、千葉は優しい。
しかも、ごく自然にそうしてくれるから、それに気付いた時、ちょっとドキッとしたりする。
あたしはこんなふうに優しくされるのには慣れていなくて、
「わーい、ラッキー」
ついふざけてしまう。
「てか、重いんだけど。いったい何入ってんの?」
「女の子は色々必要なの!」
「ふーん、大変だな」
あたしの冗談をわかっているのかわかっていないのか、あいまいな反応。
クールな千葉の表情は読みにくい。



