二人を見守っていると、隣からガイドブックと一緒に低い声が飛んできた。
「で、どこだっけ?みたらし団子」
千葉がガイドブックめくりながら言う。
「え?」
首をかしげていると、
「行きたいんだろ?早く計画にねじ込まないと、却下されるぞ」
「あ、うん」
言われたままにガイドブックのページを進めるけれど、
「うわ!このパフェすごい!日本最大級だって!」
「きゃー。この和菓子かわいいー」
「絶品、黒毛和牛コロッケだって!」
おいしそうなものばかり目について、なかなかさっきのお菓子屋さんにたどりつかない。
「おまえ…食い意地張りすぎだろ」
そう言って、千葉が苦笑する。
「あ、千葉が笑った」
あたしは千葉を指差す。
笑顔の印象はほとんどない、いつもクールな千葉。
一年生の時も同じクラスだったけれど、男子同士でじゃれ合っている時以外で笑った顔を見ることは、皆無と言っていい。
「俺を何だと思ってるわけ?」
笑いを引っ込めて、ムスッとする千葉。
「や、ごめんごめん。ちょっとびっくりしただけ。だから、ね。笑って笑って?」
ふざけて千葉の顔を覗き込むと、
「うるせ」
千葉がガイドブックを閉じて、それであたしの頭を叩く。
「うっ」
かなり厚いガイドブックは重く、思わずうめき声を上げると、
「“うっ”て言った?“うっ”って。普通言う?」
千葉が、今度は楽しげに笑った。
頭は痛かったけれど、笑ってくれたから、ま、いいか。



