不機嫌なあたしに、雄平は尚もからんでくる。
あたしの机に片手をついて、覗き込むようにして言う。
「杏奈には俺がいるじゃん」
だから…
あんまり軽々しくそういうことを言わないでよ、と言いかけた時。
バサバサッと豪快な音がして、足元に数冊のノートが飛んできた。
それと同時に、か細い女の子の声が上がる。
「きゃっ!ごめんなさいっ」
持ち主だったらしい子が床に膝をついて、ノートをかき集め始めた。
「大丈夫?」
あたしも雄平も席を立ってそれを手伝う。
近い距離で目が合った彼女は、情けなさそうに眉を下げて笑った。
「ありがと」
その笑顔に、あたしは思わずどぎまぎとする。
小柄で、やわらかい雰囲気を持つ彼女は、あたしとは正反対の、かわいらしい女の子。
うらやましくなるくらい、女の子らしい。



