恵のことは美保にまかせて、あたしも学校から支給されたガイドブックをパラパラとめくる。
「あ!ここ行きたいな」
「ん?どこ?」
ページをめくる手を止めると、香織が覗き込む。
「このみたらし団子、すっごいおいしそう」
老舗のお菓子屋さんの写真を指しながらそう言うと、
「ぶっ」
机を合わせた向こう側で、雄平がふき出す。
「おまえ、串スキだね」
串?
あ、夏祭りの、焼き鳥のことだ。
確かにあたし、串に刺さったものばかり食べたがっている。
「焼き鳥もみたらし団子もおいしいじゃん」
口をとがらせてそう言うと、
「ん?なになに?焼き鳥って何?」
森があたしと雄平を交互に見る。
「別に何でもねーって」
雄平が言うと、森はますます興味を持ち始めた。
「なんだよ、怪しいぞー。二人だけの秘密、的な?」
“二人だけの秘密”という言葉に、胸が小さく跳ねる。
焼き鳥のことは香織も知っているけれど、あの日、あたし達には本当に、“二人だけの秘密”があるから。
「ばぁか、そんなんじゃねーって」
そう言うけれど、言えば言うほど怪しくなるもので、なんだかみんなの視線が痛い。
そして、香織の視線も。
好きな人が、他の女の子と一緒に冷やかされているのを見るなんて、きっと嫌な思いをしている。
「香織は何食べたい?」
香織にガイドブックを差し出しながら尋ねると、すかさず雄平が突っ込む。
「“何食べたい?”じゃなくて、“どこ見たい?”だろ。修学旅行なんだから」
「確かに」
みんな笑って、ようやくその場の雰囲気が変わり、ほっとする。



