香織と別れ、とぼとぼを帰り道を歩く。
太陽はもうずいぶん低い位置にきていて、オレンジ色に変わろうとしている。
器に残った、マンゴーのかき氷みたいな色だと思った。
頭の中で、香織の、イチゴのシロップのせいか、氷の冷たさのせいか、いつもよりほんのり赤い唇が、雄平のことを好きだと言う。
あたしが『協力する』と言ったことは、雄平のことを何とも思っていないということだ。
香織はそう思ったから、聞かなかった。
『杏奈も、雄平君のこと、好きなんじゃないの?』
そう聞かれていたら、あたしは迷わず、答えられただろうか。
「雄平なんか…好きじゃないよ…」
代わりに今、言ってみる。
胸がチクッとする。
でも、逆だって同じだ。
「あたしも、雄平のこと、好き…?」
そうつぶやいても、あたしの胸は、熱くなったりしないんだ。
だからきっと、あたしは雄平のことを、男の子として好きなわけじゃない。
雄平は、大切な、特別な友達。
あたしが雄平を想うのは、香織が雄平を想うのとは、全く違う感情。
だから、悲しむことはない。
あたしと雄平の関係は、何も変わらない。
それで、いいじゃない。