いつの間に、雄平の背中はこんなに大きくなったんだろう。
雄平の後ろ姿を見ながら、思う。
出会った頃は、あんなにも小さくて、頼りなかったのに。
そばにいすぎて、その変化に気付けなかった。
「杏奈?ちゃんとついて来てる?」
少し先を歩いていた雄平が、心配そうにあたしを呼ぶ。
「あ、ごめん。大丈夫」
小走りで追いつくと、
「もーおまえ、あぶなっかしい」
「…いたっ」
雄平があたしの頭を小突く。
その握った手をあたしの前で開くと、チリンと音が鳴る。
そこにはさっき雄平があたしにぶつけてきた、犬の鈴。
「目印。持ってて」
言われるままに、それを受け取る。
「それがあれば、すぐに居場所がわかるな」
雄平が、ニッと笑う。
あたたかい涙が、じんわりと、目を覆った。
雄平は、最初からこの鈴をあたしにくれるつもりだったんだ。
それは、あたしが露店でこの鈴を見ていたことを、雄平が知っていたから。
そして、あたしが雄平と香織の前からこっそりといなくなろうとした時も、鈴をぶつけて止めてくれた。
それは、雄平がいつでもあたしを気にかけていてくれたから。
この鈴は、雄平があたしのことを見てくれているという、証なんだ。
あたしは、涙声にならないように、精一杯強がりながら、言う。
「小さな子供みたいじゃん」
素直じゃなくてごめん。
でも雄平は、笑ってあたしの頭を撫でてくれた。