小さな動揺を隠すように、あたしはわざとらしくため息をつく。
「あんたってほんと、神出鬼没だよね」
けれど雄平はあたしの憎まれ口をさらりとかわす。
「だから、運命だって言ってるっしょ」
また、そういうことを言う。
雄平にとっては大した意味のないその言葉に、あたしの胸は馬鹿みたいにドキドキいう。
さっきからおかしい、あたしの心臓。
どうして雄平なんかにドキドキしないといけないの?
悔しくなる。
「あたし、雄平君の私服初めて見た!」
香織が言う。
そういえば、あたしも制服姿でない雄平とは、数回しか会ったことがない。
それも、私服で参加する学校行事だとか、街で偶然見かけたりだとか、その程度。
「あ、そっか。そうだよね。どう?いけてる?」
雄平がアロハシャツみたいな服の裾を広げて、くるんと回ってみせる。
穴のあいたジーンズに、足元はビーチサンダルだし、どこがいけてるんだか。
でも香織は、はしゃいで笑う。
「うんうん、いけてる、いけてるっ」
「ありがとっ。かおりんも浴衣似合ってるよっ」
きゃっきゃっとはしゃぐ二人。
まったく、どういうノリなのよ。
あたしはひとり、ため息をつく。