ほぼ一日中を塾で過ごし、家に帰っても部屋にこもるといった勉強漬けの毎日が始まった中、夏祭りは良い気分転換になりそうだ。
夕方、神社の鳥居の近くで香織を待つ。
「あーんなっ。お待たせー」
祭囃子の中でもよく通る澄んだ声が、あたしを呼ぶ。
いつになく上機嫌なのは、かわいらしい浴衣に包まれているからだろう。
紺色の地に淡い色の花が描かれた浴衣に、ピンク色の帯を締め、髪の毛は綺麗に結い上げられている。
器用な香織のことだから、髪も着付けも、自分でやったに違いない。
そんな香織が、カラコロと涼しげに下駄の音を響かせながら駆けてくるものだから、
「香織ー!めちゃめちゃかわいい!あたしの彼女になって!」
そう言って抱きとめると、香織もうれしそうに笑う。
「きゃーっ!告白されちゃった」
すると、
「いやーん、ボクも混ぜてー」
ドキンと胸が跳ねるその声は、雄平。
…って、何ドキッとしてるのよ、あたし。