「雄平、ありがと」


自然とそう口にしていた。


雄平の目が、少しだけ大きく見開かれる。


「体育大会の日、助けてくれて、ありがと。それから、さっきも。あたしが将太君に会って、辛くなるって思ったから、先に将太君のところに行ってくれたんだね」


思えば、あたしはいつも雄平の優しさに守られていた。


あの日、助けてくれたということは、一人でいなくなったあたしのことを心配してくれたからだったんだ。


偶然あんなところを通りかかることなんてないのに、あたしは、雄平があの場所にいてくれたことの特別さに、今まで気付いていなかった。


雄平に対する感謝の気持ちが、胸を熱くする。


「ありがと、いつも…」


言いながら、泣きそうになる。


雄平は、ふ…と表情を和らげたと思うと、


「…ばぁか」


あたしの頭に手を乗せてぐりぐりと撫で、そっぽを向いた。


その拍子にあたしの顔が下に向いて、涙が一粒だけ、ポタリと床に落ちた。


「ま、気にすんな。女の子を守るのが男の役目だ」


そう言ってポンポンとあたしの頭を叩き、雄平はあたしに背を向けた。


ちょっと、キザだよ、雄平。


でも、すごく、頼りになるよ。


雄平、ありがとう。