二人がにらみ合っている。
「雄平、いいから」
あたしは雄平を押しやって、将太君と向き合った。
なんだか少し大人っぽくなったみたいだ。
男の子の成長は早い。
「どうしたの?将太君、何か用?」
問いかけると、将太君はいきなり頭を深く下げた。
「悪かった!」
「へ?」
唐突すぎて、間の抜けた声がもれる。
「突然あんなことして、俺、最低だった!ごめん!」
体育大会の保健室でのことを、謝ってくれているんだ。
悪い子じゃ、ないんだ。
それはわかっていた。
だから悲しかったのかもしれない。
「もういいよ。ね、顔上げて」
肩に触れて顔を上げるように促す。
すると将太君は、跳ねるように顔を上げ、勢いよく後ずさった。
顔がさっきより真っ赤だ。
初めて会ったあの日と同じだ。
将太君はあたしと視線を合わさず、早口で言う。
「あ、えーと、これからも、話しかけたりしても、いい?」
「え、うん。それは、全然、かまわないけど」
するとようやく顔を上げ、あたしを見た。
次の瞬間、うれしそうに笑って、
「よっしゃ」
小さくガッツポーズして、
「じゃーな!杏奈!」
元気よく走り去った。



