香織と別れて、沈んでいく太陽を見ながら、雄平のことを考えていた。
雄平と出会ったのは、中学一年生。
あの頃、からかうのはあたしの方だった。
背はあたしの方が高かったし、雄平は色は白いし声も高くて、ふざけて「雄子ちゃん」なんて呼ぶこともあったくらい、かわいらしい男の子だった。
そのくせ負けん気が強くて、なぜかあたしに張り合ってばかりいた。
あの頃は、何だってあたしの勝ちだった。
それなのに。
いつの間にか見上げる位置にある、雄平の顔。
肩幅が広くなって、筋肉がついて、がっちりした男の子の体になっていた。
力比べをしなくなったのは、いつからだろう。
きっと、やめたのは雄平の方からで、それは、もう雄平の圧勝だと決まり切っていたから。
それに気付いた雄平は、ちゃんとあたしのことを女として扱ってくれていたんだ。
さっきあたしの手首をつかんだ雄平の手は、大きくて、力強かった。
あれが今の雄平。
でもあたしは、雄平を男として見たことなんてなかった。
雄平は、男の人。
あたしとは違う生き物で、女の子が恋する対象。
雄平は、男の人なんだ。
そんな当たり前のことに、あたしは気付いていなかった。
ううん、本当は、見ないようにしていただけなのかもしれない。
“男と女”であることを意識してしまったら、この関係が崩れてしまう気がしたから。