帰り道、あたしは香織に昼休みの出来事を話した。
「将太君、やるねぇ」
のんきにそう言う香織。
暗くならないようにしてくれる香織の気遣いがわかったから、あたしもふざけたようにふくれて見せる。
「もう!ほんとに怖かったんだから」
「ごめんごめん。よしよし」
香織が頭を撫でてくれた。
香織に話してよかった。
襲われたなんて、人に言うのは勇気がいる。
あの時の恐怖を思い出すことになるし、自分がそういう対象になっているだなんて、恥ずかしさもある。
あたしに非がないと頭でわかっていても、軽蔑されてしまうんじゃないかって、なぜかそんなふうに思ってしまった。
でも香織はそんな子じゃないし、他の誰かに話したりもしない。
約束しなくたって、話していいことと悪いことはわかってくれる。
こういうのをわかってくれる子は案外少なくて、あたしは大切なことを話す時、いつからか、よく考えるようになってしまっていたことに気付く。



