あたしにバトンが渡った時は、まだ最下位だった。
でも、一年生の男の子が差を詰めてくれたおかげで、すぐに一人を抜いた。
あと二人。
せめて、雄平に繋げる前に、差を縮めておきたい。
「杏奈ーっ!」
遠くで雄平が手を振る。
一人、抜いた。
ごめん、雄平、あと一人、残っちゃった。
「杏奈!」
雄平が手を差し伸べる。
練習をし始めた頃は全然うまくいかなかった、バトンの受け渡し。
練習を重ねた今も、渡す瞬間には心臓が縮み上がる。
でも、大丈夫、きっとうまく行く。
雄平は必ず受け取ってくれる。
信じなきゃ。
雄平を。
自分を。
大きな手のひらに向かって、バトンを叩き込む。
「まかせた雄平!」
パシン、と乾いた音がして、バトンはしっかりと、繋がった。
「まかせろ!」
そう言って、雄平は飛び出すように加速した。



