雄平がそれに気付いたのかはわからないけれど、将太君の胸倉をつかんで引き寄せ、
「女を力づくで手に入れようとするから、てめぇはガキなんだよ!」
そう言い放った。
将太君が言葉に詰まるのが、雄平越しにわかった。
「杏奈、行くぞ」
雄平があたしの手を取る。
あたし達は足早に保健室を後にした。
将太君に強く握られた手首を、今は雄平がつかんでいる。
その部分が、熱い。
「ったく!」
雄平は突然立ち止まって振り向いた。
「無防備すぎるんだよ!何で一人で来た!?」
雄平が怒鳴る。
雄平が本気で怒った顔を見たのは、初めてかもしれない。
その剣幕にひるみながらも、あたしは言い訳を試みる。
「だ、だって。将太君が倒れたの、あたしのせいだと…」
でも雄平は聞く耳を持たず、あたしの言葉をさえぎる。
「言っただろ!一年生だって男は男なんだよ!甘く見てっから簡単に押し倒されんだよ!」
「別に、甘く見てなんか…」
確かに、警戒なんて全くしていなかった。
でも、学校内でそんな目に合うなんて、誰が想像するだろう。
あたしは、そんなにも軽率だっただろうか。
さっきの恐怖で感情が不安定になっていたせいか、あまりに怒鳴られたせいか、色々な感情が渦巻いて、今にも爆発しそうだ。
そして、次の一言で、あたしの感情を抑えていたものが、決壊した。
「だいたいそんな格好して男に近付いたら、どうなるかくらいわかるだろ!」
プツン、と頭の中で音がした。



