将太君の顔が近付いてくるのを感じる。
ぎゅっと目をつむって、体を強張らせるしかなかった。
その時。
バタバタいう靴音が聞こえた気がして、次の瞬間、急に体が自由になった。
そっと目を開けると、視界のほとんどが黒っぽくて、それが雄平の学ランだと気付くのに、少し時間がかかった。
雄平が、助けに来てくれた…?
信じられない状況を、すぐに飲み込めない。
雄平はあたしの手を引いてベッドから起こし、あたしを背中に隠すようにした。
その背中が大きくて、すごく安心した。
すがりつきそうになった。
雄平は将太君を怒鳴りつける。
「てめぇ!何やってんだよ!」
将太君も負けじと声を張り上げる。
「な、何って…好きな女にキスしようとして悪いかよ!」
言葉にされると生々しくて、あたしはさっきの恐怖を思い出す。
将太君がキスしようとしただけだとしても、あたしにとっては、それ以上の恐怖だった。
自由を奪われることが、あんなに怖いものだなんて知らなかった。
あたしは思わず、雄平の学ランの裾を握りしめる。
その手が少し震えていて、自分でも驚いた。



