「なんだよ杏奈。俺がいるじゃーん」


悲しみの底にいるあたしの頭上に、ふいに落ちてきた低い声。


声の主は、


「雄平、あんたなんてどうでもいーの」


小野雄平。


同じクラスになりたくもないのに、一年、二年と同じクラスだった腐れ縁だ。


「って、…え?」


そいつが「俺がいるじゃん」なんて言うってことは、


「また同じクラスってことは、ないよね?」


恐る恐る尋ねる。


嫌な予感は当たるもので、


「まさか三年間ずーっと一緒とはねぇ」


雄平は唇の端を持ち上げて、


「運命だね」


わざとらしく甘ったるく、言った。