胸の中の小さな変化をどうにかしたくて、あたしは雄平に嫌味を言う。
「とめられないのに、脱ぐ時どうするのよ」
「そん時は杏奈にとってもらうもん」
当たり前みたいにさらりと言うから、胸が跳ねるのが一瞬遅れる。
雄平にとっては特別な意味なんてなくて、表情も変えず、
「外、先行って準備してるから」
長めの学ランをひるがえし、行ってしまった。
「とってもらうもん、かぁ」
香織がどこか淋しげにつぶやき、雄平の後ろ姿を見送っていた。
その目はどこかせつなげで、熱っぽくて、そんな香織の表情を初めて見たあたしは、つい見入ってしまう。
すごく、綺麗だと思った。
いつもはふんわりとかわいい香織が、大人の女性に見える。
まるで、恋をしているような瞳。
香織、今までもそんな目で、雄平のこと見ていたのかな?
あたしが気付かなかっただけ?
『雄平のこと、好きなの?』
喉まで出かかった言葉を、飲み込む。
香織に対して、こんなふうに躊躇してしまうのは始めてだった。
香織は、好きな人ができたら話してくれるはず。
雄平のことを好きなのに、自分から話してくれなかったって知ったら、あたしは傷付いてしまうだろう。
それを怖れて、自分から聞くのをやめた。
ただ、それだけのこと。



