そして訪れた、体育大会当日。
女子と男子と交代で教室を使い、応援団は衣装を、それ以外は、みんなで作ったおそろいのTシャツ姿に着替えることになっていた。
先に教室を使うのは男子。
早い人は、もう済ませて廊下に出てきていた。
「わぁ!小野君かっこいー!」
「ほんと、似合うー」
そんな歓声が上がり、その向こうには、学ランに身を包んだ雄平がいた。
あたしを見つけた雄平が、どうだと言わんばかりの得意顔で近付いてくる。
「はいはい、似合ってるよ」
聞かれるより先に言ってやると、
「ここ、とめて」
甘えたように、白い手袋をつけた両手を差し出してきた。
手首までの長さがある手袋は、脇に小さなフックとボタンがついていた。
でもあいにく、あたしは両手にチアの衣装を抱えていて、手があいていない。
香織が遠慮がちに
「あたしがとめようか?」
と言い、
「まじ?さんきゅー」
雄平もうれしそうにとめてもらっていた。
「あれっ…こうでいいのかな?」
香織が手間取っていると、雄平が顔を寄せて、一瞬だけ二人の距離がものすごく近付いた。
「あ、ごめん」
雄平らしくもなく、どぎまぎとして、照れたように視線を漂わせている。
雄平が照れているところなんて、初めて見たかもしれない。
雄平は、あたしに同じことをしても、照れたりしない。
相手が、香織だから。
なぜだろう、胸にチクっと、小さな痛み。



