「杏奈ー!小野くーん!写真撮るよー!」
向こうで、美保が大きく手を振っている。
見ると、クラスメイトが集まっていた。
「行くぞ!」
「うん!」
雄平と笑顔を交わし、二人でみんなのもとへ走った。
「公衆の面前でイチャついてんじゃないわよー」
香織が寄ってきて、もとは雄平のものだったネクタイをつまむ。
一部始終を見られていたらしい。
香織の顔はすっきりしていて、雄平のことは吹っ切れていると言うように、笑ってくれた。
「香織、大好き!」
抱きつこうとするあたしの腕が、香織に阻止される。
「やだ、やめて」
そう言ったかと思うと、
「うそ!あたしも好きだよ!」
香織があたしに飛びついてきた。
ぎゅっと抱き合う。
これからは、当たり前みたいに毎日一緒にはいられなくなるけれど、この友情はずっと続いていくと、あたしは確信している。
卒業する前に、香織と本気でぶつかり合えてよかった。
もしあのことがなかったら、あたし達は、この卒業式が最後の別れだっただろう。
痛みを伴うものだったけれど、あたしは全てのことに、後悔はない。



