あたしは雄平の正面に回り込む。
「もしかして、焼きもち!?」
こんなこと、初めてだ。
雄平が初めて見せた一面に、あたしは状況も忘れてうれしくなる。
「今度こんなことあったら、許さねぇから」
口をとがらせてボソッと言う雄平を、たまらなくかわいく思う。
雄平を安心させたくて、
「わかった!あたしに触っていいのは雄平だけだから!」
思わずそんな言葉が飛び出すけれど、雄平の照れた顔を見て、自分の言葉の大胆さに気付いた。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
雄平があたしに手を伸ばしてきたので、あたしは慌てて後ずさる。
「ネクタイ!ネクタイ交換しよう!」
「ん?ああ、そうだな」
ネクタイをゆるめて、輪にしたまま頭から抜く。
雄平が自分のものをあたしの首にかけて、軽く締めてくれた。
三年間、雄平の首もとにあったものが、自分に巻かれていると思うと、なんだか照れくさい。
背伸びして雄平の頭に自分のネクタイの輪を通そうとした時、雄平はあたしを支えるふりをして、ほんの一瞬だけ抱きしめた。
慌てて飛びのくと、雄平はいたずらっぽく笑う。
そしてあたしの耳元に口を近付け、
「まじで、俺だけのものだから」
ささやくように、言った。



