きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




教室でたくさん写真を撮り、帰り支度をして外に出てからも写真を撮ったり、他のクラスの友達や後輩達とおしゃべりをする。


名残惜しくて、しばらく帰れそうにない。


「杏奈!」


ふいに呼ばれて振り返ると、きっちりとブレザーを着てネクタイを締めた将太君がいた。


「卒業おめでとう」


「ありがとう!」


にっこり笑うの将太君に、あたしも笑顔で応える。


「杏奈、ネクタイちょうだいよ」


それは、卒業式の定番行事。


ネクタイや、ブレザーのボタンをあげたり、交換したりする。


将太君には色々と助けられたし、あげてもいいかなと思い、ネクタイをほどいていると、


「ちょっ!待て待て!そこストップ!」


遠くから声が飛んできて、次の瞬間にあたしは雄平に腕を掴まれている。


「これは俺の!」


必死な顔をした雄平の言葉がうれしくて、照れくさくて、下を向く。


「ネクタイくらい、いいじゃないっすか」


将太君が言う。


その口調に、一呼吸遅れて顔を上げる。


将太君が敬語で話すなんて、初めてだ。


雄平も、いつもと違う将太君を感じたようで、


「よし、大人になった君に免じて、ボタンだけは許そう」


と、わざとらしく偉そうな口調で言う。


そんな雄平に、


「まじすか!あざーす!」


体育会系の部活のように頭を深く下げる将太君。


本当に、将太君はずいぶん大人になった。


見た目も、中身も。