動けなかった。
雄平が再びあたしの髪をすくい、指を滑らせる。
はらりと落ちてきた一束が、頬を撫でる。
その頬に、今度は雄平の指が触れた。
その瞬間、ピクリと体が反応する。
我に返ったように、心臓がドクドクと鼓動を速めていく。
雄平が、あたしの頬を撫でる。
苦しくて目をそらしてしまいたいのに、雄平の目に見つめられて、あたしは自由を奪われる。
雄平の瞳に、吸い込まれたみたいだ。
ふいに、雄平がふっと表情を和らげる。
そして、顔が近付いてきたかと思うやいなや、雄平の唇が、頬に触れた。
一瞬の出来事に、目を閉じる暇もなかった。
「ここは、また今度」
頬に触れた手の親指で、唇を撫でる。
カッと顔が熱くなる。
「ほんとは今したいけど」
雄平が、いたずらっぽく笑い、あたしはようやく雄平の呪縛から解放された。
座ったままお尻をずらし、雄平と距離を取る。
これ以上くっついていたら、本気で心臓が壊れそうだ。
熱くなる頬を両手で覆いながら、呼吸を落ち着けようとするけれど、
「杏奈」
雄平に呼ばれて、再び跳ねる。
「大事なこと言うの忘れてた。こっち来て」
そう言われて、しぶしぶ元の位置に戻る。



