小箱の中に入っていたのは、ネックレスだった。
あたしは、今までアクセサリーを身に着けたことがない。
それは、あたしのコンプレックスの表れだった。
自分に自信が持てず、女らしく振る舞えない自分には、そんな資格がないように思っていたし、何より照れくさかった。
アクセサリーを身に着けることは、あたしにとっては“成長”を意味する。
自分を磨き、そしていつか自信を持てた時、最初にまずネックレスを着けようと思っていた。
「杏奈は綺麗だから、これが似合うと思ったんだ」
そう言って雄平が手に取ったネックレスは、華奢で、ティアドロップをモチーフにしたシンプルなデザインだ。
大人っぽくて、あたしには背伸びし過ぎのように見える。
でも、雄平が似合うと言ってくれるのなら、それは何よりの自信になる。
「ありがと、うれしい」
雄平の手から、鎖が指にまとわりつくように滑り込んでくる。
ぎこちない手つきで金具をはずし、苦労して首の後ろで留める。
鎖骨の上にひんやりとした感触があって、なんだかくすぐったい。
「見せて」
雄平が、あたしの胸にこぼれた髪をすくうようにして、ネックレスを覗き込む。
「うん。似合うよ」
そう言って、優しく微笑んでくれた顔が思いのほか近くにあり、逃げるように体を後ろに傾けようとした。
でも雄平の手が肩を押さえ、それを阻止する。



