口に入れると、バターの香りが広がる。
大好きな、サクサクとした食感。
「おいしー!」
幸せに浸っていると、
「あーん」
雄平が口を開ける。
「え…え!?」
思わず一歩後ずさると、雄平が口をとがらせる。
「なんだよぉ。俺は食べさせてやったじゃん」
それは、よく覚えている。
とても甘くておいしかったことも、すごくドキドキしたことも。
あたしはクッキーをつまんで、ぎこちない手つきで雄平の口に運ぶ。
パクッと受け取った雄平は、もぐもぐと噛みしめて、とんでもないことを言う。
「杏奈の味がする」
「そ、そんなわけないじゃん!馬鹿!」
「ふふ、かわいいなぁ。杏奈っていじめたくなる」
笑ってそう言い、小さな子供にするように頭をなでる。
複雑な気分で、あたしはクッキーをもう一つ食べた。
いつも雄平のペースで、なんだか悔しい。
「もう一個も開けてみて」
コロンとした箱を指差すので、手に取る。
片手におさまる、小さな箱だ。
リボンをといて、蓋をはずした瞬間、体が固まってしまった。
どうして雄平は、あたしをこんなに喜ばせてくれるのだろう。
まるであたしの心が、見えているみたいだ。



