きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




口に入れると、バターの香りが広がる。


大好きな、サクサクとした食感。


「おいしー!」


幸せに浸っていると、


「あーん」


雄平が口を開ける。


「え…え!?」


思わず一歩後ずさると、雄平が口をとがらせる。


「なんだよぉ。俺は食べさせてやったじゃん」


それは、よく覚えている。


とても甘くておいしかったことも、すごくドキドキしたことも。


あたしはクッキーをつまんで、ぎこちない手つきで雄平の口に運ぶ。


パクッと受け取った雄平は、もぐもぐと噛みしめて、とんでもないことを言う。


「杏奈の味がする」


「そ、そんなわけないじゃん!馬鹿!」


「ふふ、かわいいなぁ。杏奈っていじめたくなる」


笑ってそう言い、小さな子供にするように頭をなでる。


複雑な気分で、あたしはクッキーをもう一つ食べた。


いつも雄平のペースで、なんだか悔しい。


「もう一個も開けてみて」


コロンとした箱を指差すので、手に取る。


片手におさまる、小さな箱だ。


リボンをといて、蓋をはずした瞬間、体が固まってしまった。


どうして雄平は、あたしをこんなに喜ばせてくれるのだろう。


まるであたしの心が、見えているみたいだ。