入試が終わり、三年生の教室には、のんびりとした空気が漂っていた。
クラスのみんなにメッセージを書いてもらうサイン帳を回したり、こっそり持ち込んだカメラで写真を撮ったりして過ごす。
卒業式の練習をする度、別れを実感し、淋しい気分になった。
体育館から教室へ続く廊下を歩いていると、いつの間にか雄平が隣を歩いていて、
「ホームルーム終わったら、屋上の階段のとこに来て」
ひそめた声で言うので、小さく頷く。
あたし達のことをみんなに隠しているわけではないのだけど、雄平は楽しんでいるのか、たまにこうやってあたしをこっそりと呼び出してくれる。
ドキドキとワクワクの入り混じった、秘密の約束。
「香織、今日先に帰っててね」
ただそうとだけ伝えると、
「ニヤけちゃって」
香織があたしの頬をつまむ。
どうやら、うれしい気持ちを隠し切れていないらしい。
帰りのホームルームが終わり、掃除のために、机をガタガタと鳴らしながら教室の後ろに移動させる。
雄平も掃除当番ではないことは、壁に貼った当番表で確認済みだ。
鞄と上着は置いたまま、足早に廊下を過ぎる。
屋上は常に施錠されているので、そこへ続く階段はいつもひと気がない。
一度は屋上へ出てみたかったのだけど、中学校三年間の中で、その機会には恵まれなかった。
階段を上り、踊り場で回り込むと、一番上の段に、雄平が座っていた。



