黒板の上の掛け時計を見て、雄平が言う。
「さてと、そろそろ行こうかな」
もうそんな時間かと、がっかりするあたし。
ドキドキさせられて苦しいのに、もっと一緒にいたい、ちぐはぐなあたしの心。
「杏奈の顔も見れたし、今日はがんばれるよ」
その言葉に、再び顔が熱くなる。
「あ、あた、し、も」
あたしも、雄平の顔を見られて、うれしかった、と言いたいのに、言葉にならない。
どうして雄平は、そんな照れくさい言葉を、さらりと言えるのだろう。
「はいはい、杏奈も俺に会えてうれしかったんだね」
あたしの言葉が雄平に代弁されてしまい、少し悔しい。
「また会いに来る。テスト、がんばろうな」
覗き込むようにして視線を合わせる雄平にドキドキして、返事の代わりにこくんと頷く。
あたしの肩を力強くポンポンと二回叩いて、雄平は教室を出て行った。
「うわっ!こんな所で何やってんだよ、宮下!」
廊下から、そんな声が聞こえたかと思ったら、
「試験会場で何やってんのよ。ラブラブすぎて見てらんない」
腰に手を当てて呆れ気味の香織が、教室に入ってきた。



