香織はトイレに行くと言って、そそくさと教室を出て行ってしまった。
気を使ってくれたのか、おもしろがって廊下から盗み見ているのかは定かではない。
「杏奈」
「はっはい!」
突然呼ばれて、思わず声を上げてしまう。
そんなあたしの反応を見て、くつくつと笑う雄平。
そして顔を寄せて、
「照れてんの?かわい」
耳元でささやくように言うので、顔から火が出たかと思った。
雄平こそ、試験の直前にこんなことをして、あたしの頭の中を雄平でいっぱいにしてしまう。
「落ちたら雄平のせいだからねっ」
悔し紛れに、雄平の腕を叩く。
「杏奈なら大丈夫だよ」
そう言って、ポンっと軽く頭を叩く。
それだって、あたしの心を騒がせるというのに。
キッとにらむけれど、雄平は優しい顔であたしを見る。
その顔に、あたしはまたドキドキする。
こんなに胸が速く打って、試験の前に息切れしてしまいそうだ。



