それ以来、練習中に将太君と雄平が衝突することはなく、準備は着々と進んでいった。
あたしはというと、雄平のことをついつい意識してしまって、どうにも落ち着かない。
「おーい、またかよ。しっかり渡せって!」
雄平の声と、リレーのバトンが土の上に落ちる乾いた音が重なる。
リレーの練習は、あたしのせいでうまくいっていなかった。
「ごめん!」
最後から二番目の走者になったあたしは、アンカーの雄平にバトンを渡す。
そのタイミングが合わない。
「順番変えるか?」
リレーを仕切ってくれている陸上部の千葉が、そう提案する。
あたしも、その方がいいかもしれないと思い始めていた。
悔しいけれど、こうも失敗を繰り返していると、いい加減自信がなくなってくる。
でも雄平は首を横に振る。
「いや、練習しよう。杏奈、俺、もうちょいゆっくりスタートするわ」
「でもそれじゃタイムが落ちる」
ストイックな千葉は反対する。
でも雄平も折れない。
「千葉の言う通り、速く走るのは大事だ。クラス対抗だからな。他のクラスより遅ければ負けだ。でもな、クラス対抗だからこそ、妥協はしたくないんだ」
雄平…
今の雄平、悔しいけど、ちょっとかっこいいよ。
体育大会やリレーに対する熱い気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
それに、あたしのことをかばってくれているっていうわけじゃないけれど、あたしのために千葉とぶつかってくれているんだ。
それが、うれしい。



