ラストスパートで慌ただしく日々を過ごし、ついに、明日に迫った高校入試。
たくさん勉強したし、模試での成績も安定していたから、それなりの自信を持つことはできていた。
でも、落ち着かないのは仕方ないものだ。
前日にじたばたと勉強するのも余計に不安になってしまいそうだから、夜のまだ早い時間、神社に行くことにした。
薄暗い境内を、ゆっくり歩いた。
ここは、夏祭りに来た神社。
雄平との思い出の場所でもある。
クラスメイトと花火をしている時、こっそり連れ出して、ホタルを見せてくれた。
そんな素敵な場所だから、ここに来たら、気持ちを強く持てる気がした。
『明日がんばれますように。勉強の成果を100%発揮できますように』
手を合わせて目を閉じていると落ち着いてきて、
「よし」
小さくつぶやいて、踵を返した。
すると、街灯に照らされた薄暗い石段を上ってくる人影に気付く。
もしかして同級生が、あたしと同じように、最後の神頼みに来たのかもしれない。
そんなこと考えながら石段を下りていると、だんだんとその姿が鮮明になってきて、
「よお」
まさかの、雄平。
心臓が跳ね上がる。